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東京高等裁判所 昭和49年(行コ)42号 判決 1975年2月27日

東京都江東区北砂町一丁目五二九番地

控訴人

合資会社下田鉄工所

右代表者代表清算人

山田三郎

東京都江東区亀戸二丁目一七番八号

被控訴人

江東東税務署長

島寛

右指定代理人

中島尚志

二木良夫

門井章

日野照夫

右当事者間の昭和四九年(行コ)第四二号法人税額変更請求控訴事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴会社代表者は「原判決を取消す。被控訴人は、控訴会社の昭和三四年二月一日から昭和三五年一月三一日迄の法人税課税所得金額のうち金一〇〇万三九〇〇円を超える金二四万四〇〇〇円について、昭和三五年六月三〇日付でなした更正処分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との旨の判決を求め、請求の原因として、

一、被控訴人は、控訴会社の昭和三四年二月一日から昭和三五年一月三一日迄の事業年度(以下本件事業年度という)の法人税の申告につき、昭和三五年六月三〇日付をもって更正処分(以下本件更正処分という)を行ったが、右更正処分は、控訴会社の前代表者に対する未払退職金二四万四〇〇〇円を否認する趣旨を含むものである。

二、控訴会社は、右更正処分について再調査の請求又は審査の請求をしなかった。

三、しかし、被控訴人が控訴会社(昭和三五年一月三一日解散)に対してなした清算所得にかかる法人税額等の更正処分及び加算税の賦課決定処分につき、控訴会社が審査の請求をしたところ、東京国税局長は、控訴会社の前代表者に対する前記未払退職金二四万四〇〇〇円を控訴会社の残余財産の価額に算入すべきではない旨の裁決をなした。

四、従って、本件事業年度における控訴会社の法人税課税所得金額の計算のうえでも、右未払退職金二四万四〇〇〇円については所得金額から控除されるべきものであるから、本件更正処分のうち、右未払退職金の額に相当する部分の取消を求めるものである。

五、被控訴人の後記主張にかかる第四項の事実は、これを認める。

と陳述し、証拠として、甲第一乃至第七号証を提出し、乙第一号証の成立を認める、と述べた。

被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求め、請求原因に対する答弁として、

一、請求原因第一項の事実のうち、被控訴人が昭和三五年六月三〇日付をもって、控訴会社の本件事業年度に関する法人税の更正処分を行ったことは認めるが、右更正処分が控訴会社の前代表者に対する未払退職金二四万四〇〇〇円を否認する趣旨を含むものであるとの点は、これを否認する。

二、同第二項及び第三項の事実は、これを認める。

三、同第四項は、これを争う。

四、被控訴人が昭和三五年六月三〇日付でなした本件更正処分は、控訴会社の前代表者に対する未払退職金二四万四〇〇〇円を否認したものではなく、右未払退職金の否認による更正処分は、控訴会社の昭和三〇年二月一日から昭和三一年一月三一日迄の事業年度の法人税にかかる昭和三一年一一月二八日付の更正処分によってなされたものであり、かつ右更正処分に対し、控訴会社は昭和三四年法律第八〇号による改正前の法人税法第三四条第一項の規定による再調査の請求を行っていないので、右更正処分は既に確定しているものである、と陳述し、証拠として、乙第一号証を提出し、甲号証の成立はいずれも認める、と述べた。

理由

当裁判所は、控訴会社の本件訴は不適法であると判断するが、その理由としては、原判決がその理由において説明するところと同一であるから、右説明を引用するほか、以下の説明を付加する。

成立に争いのない乙第一号証及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人が昭和三五年六月三〇日付でなした本件更正処分は、控訴会社の前代表者に対する未払退職金二四万四〇〇〇円を否認する趣旨を含むものではなく、右未払退職金の否認は、控訴会社の昭和三〇年二月一日から昭和三一年一月三一日迄の事業年度の法人税にかかる昭和三一年一一月二八日付の更正処分によって行われ、当時控訴会社は右更正処分に対し再調査の請求を行わなかったものであることが認められる。従って、本件更正処分について、右未払退職金否認の処分の取消を求める本件訴は不適法たるを免れない。

なお、控訴会社の本訴請求の趣旨が、被控訴人において職権をもって控訴会社の本件事業年度における課税所得金及び法人税額のうち、右未払退職金二四万四〇〇〇円に相当する額の減額処分を行うべきものである、というのであるとしても、右の如く新な行政処分を求める訴は、行政訴訟の対象となるものではないから、不適法な訴たることにかわりはない。

よって本件訴を却下した原判決は相当であるから、民事訴訟法第三八四条第一項の規定により本件控訴を棄却することとし、訴訟費用の負担につき同法第九五条及び第八九条の規定を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 平賀健太 裁判官 安達昌彦 裁判官 後藤文彦)

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